男「…? あれ、夢かな」
悪魔「そう思いたければ思えばいい。貴様の願いを叶えれば何でもいいんだ」
男「あぁ、命と引き換えに…って奴ですか?」
悪魔「クックック、どうも人間は悪魔の願いを叶える代償は命と思いがちみたいだな」
男「違うんですか?」
悪魔「残念ながら違う。代償なんてものは無い」
男「でも可笑しいじゃないですか。悪魔ってのは人を不幸にする概念だって」
悪魔「まぁそうなんだがな、人の不幸を蓄えて悪魔は幸せを得るのだが」
悪魔「ただ、去年は不幸な事が多過ぎてな、不幸量が半端じゃなくてな」
男「不幸…あぁ、色々ありましたからね…色々」
悪魔「あぁ、それでだ不幸も多すぎるのもダメなもんでな、還元するんだ」
男「還元…ですか」
悪魔「まぁ日本社会でいう年間106万に抑える主婦…みたいなものだ」
男「なるほど、つまり不幸は多過ぎてもダメなんですか?」
悪魔「あぁ。不幸バブル崩壊すると戦争が起き、人が減るだろ…? そうするとこっち世界にまで影響が出る」
男「そうなんだ…面白いことを聞けたよ」
悪魔「そうだ。という訳だ。願いを言え。代償は無いぞ? お得じゃないか」
男「イマイチ信用できないな…」
悪魔「ふむ、話をしやすいように人間の姿で現れたが、ガーゴイルの姿を借りた方がよかったか?」
男「…願いはあるっちゃ、あるんだけど、ないっちゃ無いんですよ」
悪魔「ふむ。何だ? 嫌いな人を殺す、金、名声、容姿、政治操作だって容易さ」
男「うん、それはいらない。」
悪魔「まさか私といやらしいことをしようって事ではあるまいな」
男「はは、でも…」
悪魔「図星…なのか?」
男「違うんだ。俺さ、いつもさ上手くいかないんだ」
男「不幸とは思いたくない。
何かを頑張れば届く気がするんだ
でも届かないんだ。
届こうとする気が起きない。
だからこうして、苦しんでいる
一人ぼっちでいるんだ。
お金もたくさんなんていらない。
働いて得る金の方がいい。
名声も自分で得ないとつまらない。
容姿なんて特にさ。
ビーグル犬だって言ってるじゃないか。
「配られたカードでゲームしないといけない」
ってさ。犬にそれを言われたらお仕舞いさ。
政治はただ単純に興味がない」
悪魔「なんだこの語りは…少し気分が…」
男「ごめん。でもね、何かをする時にいつも背中のスイッチが届かないんだ」
悪魔「貴様はアンドロイドか? やれと言わないと出来ないのか?」
男「はは…つまり僕は弱いんだ。孤独を選んだ馴れ合い好きなんだ」
悪魔「で、私にどうしろと?」
男「あなたがもし…女性であれば、
僕とつきあってください…」
悪魔「ほう、交渉か。願いではなく」
男「はは、別にいいんだ。願いでも本当はいいんだけど、カードは自分で揃えたいからさ」
悪魔「ふむ、つまりは決定権は私か」
男「願いは『お付き合いするかどうかを選んでくれ』で」
悪魔「ま…まぁ…人間は意味が分からんな…お付き合いって何をするのかもよくわからないが」
男「なら便利な切り札があるよ」
悪魔「ふっ、人間からジョーカーを引かされるとはな」
男「便利な言葉だよ」
悪魔「じゃあ、友達からでな」
男「さて…何をしよう…」
悪魔「予想はしていたが、やはり何も考えてなかったのか?」
男「恋人って何をするのかなぁ」
悪魔「とりあえず今は恋ではないな」
男「だって、悪魔さんは全然恥ずかしがったり、照れたりしないじゃないか」
悪魔「今始めた所で、それは偽だと思うし、辛いだろう」
男「だよね…そういった面でも友達からというのは便利な言葉ですよね」
悪魔「こんな他人行儀なしゃべり方のどこが恋人なんだとも言えるしな」
男「そうですね。砕けたしゃべり方ってどうすればいいのかも難しいです」
悪魔「恋人できた事無さそうだしね、君は」
男「恋人はおろか、友達もいなかったと言っても過言ではないでしょう」
悪魔「虐められていたのか?」
男「いや、孤独でもなかったんです。いつも話す相手はいたんです」
悪魔「なら何故孤独と? 甘え?」
男「誰かと過ごすには一歩及ばなかったんです。皆にとっておれは毒も蜜もないどうでもいい観葉植物みたいなものだからね」
悪魔「つまりみんな感心しないと」
男「はい」
悪魔「だからそんな微妙な丁寧語なのか?」
男「はい、汚ない言葉を嫌う人が多い世の中なんで、中立的な言葉を使う癖がついているんです」
悪魔「…うむ、好かんな」
男「えっ、」
悪魔「お前に合わせて綺麗な言葉を使って来たが若干使うのが嫌になってきた」
男「えっと」
悪魔「うん、それ止めないと不幸にすることにした」
男「えぇぇ…」
悪魔「やめだやめだ。関西弁を使え。大阪なんだし」
男「関西弁なんて…そんな…ぎゃああ」
男「なぜタライが落ちてきたんだ…あっ」
悪魔「私の前では敬語は不幸を招く」
男「そんなぁ…」
男「ぎゃああああ!」
悪魔「ふふ」
男「ぎゃああああ」
悪魔「楽しいぞ…これ」
男「Wait!」
悪魔「ほう…英語で来たか…」
男「あ…あぶないねん…しゃれにならんでわれ…」
悪魔「……(ギロッ)」
男「……です」
男「なんで水道が壊れるんだぁ! 水浸し!!」
悪魔「さて…そろそろ夕ご飯だな」
男「もう遅いです……ねん。はよ帰り」
悪魔「その棒読みの訛りは滑稽で笑える…帰る理由がわからない」
男「いや、残念ながら…ルームメイトを寄越せる程、『空間』も『食う金』も無い」
悪魔「残念ながら悪魔だ。そんなことを言ったところで帰らんぞ?」
男「だって、幸せをくれる…って」
悪魔「天使じゃない私は。悪魔だ。願いを叶えるとはいえ、お前を労うつもりは微塵も無い」
男「…おい、勝手にコーラを飲むな」
悪魔「日本に来るのは始めてだ。冷蔵庫の中で信頼出来るのはコーラをぐらいだったからな」
男「信頼って…あーあ…」
悪魔「さて、何を食べるんだ? 早くしろ。人間の姿だと腹が減るんだ」
男「…はぁ買い物行きますよ」
>>36
行きますよは敬語だ
天罰だ!
>>37
渇っ!
>>39 つ【水】
>>41
嬉っ!
悪魔「随分と小さいスーパーマーケットだな」
男「ただのコンビニでしょ? 海外にもあるでしょう」
悪魔「私の場合は近代はアメリカが直轄していたからな。何もかも広かった」
男「あぁ…じゃあ窮屈でしょうね日本は」
悪魔「ふむ…だがこのチップスの豊富さはたまらないな」
男「あぁ、1つまででお願いします」
悪魔「私が買うから勝手だ」
男「そうですか…」
悪魔「…」(ジトー)
男「…え? 何か?」
店員「スターロンあいつ消しますか?」
男「あ、はい」
店員「798000ドルです。スイス銀行でお願いします」
男「高っ! どこのスナイパーだよ…あっ…」
悪魔「ニッシッシッシ」
男「…(そういうことか)」
男「店員がすごく困惑していたぞ?」
悪魔「貴様が敬語を使っていたからだ。いいか? 次使えば国が動くぞ?」
男「やりかねないから怖い」
悪魔「さて、この梅味というのを試してみよう」
男「あーそれ酸っぱい…」
悪魔「…なんだこれは…これがチップスなのか…微妙だな」
男「(好みに合わなかったか)」
悪魔「ああ。味が嫌いだ」
男「心の中を読むの禁止!」
男「早く支度をするぞ。手伝いなさい」
悪魔「知ったこっちゃない。さぁ早くその弁当をレンジにかけなさい」
男「寄生虫ですか?」
悪魔「喋る寄生虫をお前は見たことがあるのか?」
男「見たことがない。だが悪魔を実際に見た以上、喋る寄生虫ぐらいいても可笑しくないとは思う」
男「そろそろ…寝たい」
悪魔「寝るのか?」
男「ああ。人間だからな」
悪魔「私はどうすればいい?」
男「好きにすればいいと思う。寝たふりでも、起きててもいいよ。邪魔はしないでね」
悪魔「ふむ…帰れとは言わないんだな」
男「言ったほうが好感かな?」
悪魔「私は悪魔だ。さて、どうなると思う?」
男「質問を質問で…まぁ…帰らないかな」
悪魔「正解は色々残して帰る」
男「色々って…」
悪魔「さぁ…ピロートークをしようじゃないか」
男「結局帰らないのかよ」
悪魔「うん。悪魔だけど…その…友達だからな…」
男「その…照れ隠しか分からないですが、布団を凍りづけにしながら言うのはやめてください」
悪魔「頭を冷やして欲しいと思って…」
男「枕やろその場合…てか恋人未満の今はピロートークではないと思う」
悪魔「恋人になる方法は簡単だ」
男「愛を交わす?」
悪魔「愛人になってしまう」
男「えっ、じゃあ何」
悪魔「私たち付き合ってるんです。と第三者に言えば成立」
男「なんですかその解釈」
魔「お前に第三者はいるのか?」
男「あぁ…そっち…」
悪魔「このままだと永遠に恋人にはなれぬな」
男「付き合うという条件だぞ?」
悪魔「ほう…じゃあその粗末な棒で…
男「言わせねぇよ」
男「明日から学校に戻る」
悪魔「貴様は学生だったな」
男「悪魔は学校は来るの?」
悪魔「そうだな…生徒か先生どちらが好みだ?」
男「できれば違うクラスの先生で」
悪魔「じゃあ同じクラスの生徒だな」
男「そう来たか」
悪魔「いや、心で同じクラスの生徒がいいなと言ってたから」
男「だから…俺の心を読むな」
翌日
男「…いない…夢…?」
男「…まぁいると信じて学校に行くか」
~学校~
男「おはよう」
クラスメイト「おーおはよう」
男「今日一限数学?」
クラスメイト「そだよ」
男「…(これで俺の今日の会話は終わり)」
悪魔「じゃあ早速ノートを移させてもらおう」
男「。、。。。。自分で解け」
悪魔「なんだ…えらい冷たいやないか」
男「……転校生とかではないんだな」ボソッ
悪魔「面倒だろ…そんなの」
クラスメイト「ホントお前ら仲いいよな」
男「え…? そうなの?」
クラスメイト「自覚ないのかよw」
男「ふーんそうなんだ」
悪魔「こいつは理論臭くて敬語多いから嫌いだがな」
クラスメイト「出た照れ隠しw」
男(これがクラスメイトとの会話ってやつか…)
ピザ「じゃあ、一緒にべんきょーしようね~」
女子「はい~先輩~」
男「ブッー」
悪魔「どうしたんだ? 突然唾を吹き出して」
男「あのあだ名ピザのあいつが…女の子と仲良く出来ているのだ…」
悪魔「ありゃ…ん? 天使共か」
男「天使? あぁ。天使もいるんだ」
悪魔「悪魔もいりゃ、天使もたくさんいるさ。あいつらは幸せを糧に生きている集団だ」
男「つまり、誰かを救うことがあいつらが生きる意味なのか」
悪魔「ああ。だが、あいつらも中々自分らの利益で生きている。それが故…」
男「なんだ?」
悪魔「幸せを感じさせるために人間を敢えて不幸に陥らせがちだ」
男「なんじゃそれ…」
男「じゃあそれを、悪魔が回収すれば美味しいんじゃないのか?」
悪魔「なんで天使が作った不幸で生きなければならない。
そこまで悪魔は腐っていないわ」
男「飯も手伝いもせず何を偉そうに」
悪魔「私たちは自分たちで作った不幸だからこそ生きているんだ」
男「じゃあ天使とは概念が別なだけで、やってることは同じなんだね」
悪魔「正義の逆は正義であり、正義じゃない者の逆もまた反正義なんだよ」
キーンコーンカーンコーン
先生「皆さん…今日は転入生がいます」
クラスメイト「驚愕の事実です」
天使「どうも…天使なのです! どうぞよろしくおねがいします」
ざわ・・・ ざわ・・・
クラスメイト「こいつはかわいい」
男「…天使…隠す気0か…」
悪魔「…ちっ…あいつ日本にまでちょっかいを…」
男「面識あるの?」
悪魔「…あいつは私が仕掛けた不幸を餌に幸せを回収する乞食みたいな女だ」
男「凄い言い様だな…」
天使「えっと…席は」
先生「そうですね…クラスメ…」
クラスメイト「こっちあいjhsifoirlsjoafデジョン!」
男(クラスメイトが消えた!!?席だけ残して…あれ?
男(俺の隣って…だれかいたような…ん?)
先生「あれ? 席が一つ開いていますね…じゃあそこに行ってください」
悪魔(こいつ…席を獲得するために…存在ごと消したのか。
流石天使だな…やり方に後を残さない)
天使「よろしくね…男クン」
男「あ…はい…どうも」
悪魔(こいつは要チェックやで)
・・・休憩時間
女子A「天使さんって前は東京やったんや…ええなぁ渋谷とか近くて」
天使「そんなこと無いです…梅田もこの間行ったんですけど、すごく大きくて渋谷と引けを取らないです」
女子B「やっぱ芸能人とか普通に合うんでしょ?」
………
悪魔「流石天使…人間を惹きつける能力は天下一ですわ」
男「微妙に嫉妬していない?」
悪魔「何を言うか…人間を惹きつけるのならとっくに美貌とか色々いじります」
男「まぁそれでも…ナイズバディですもんね天使さん」
悪魔「……(ジトッ)」
・・・授業
天使「…あの男クン」
男「はい?」
天使「教科書…まだもらっていないから…見せて欲しいの…だめ?」
男「あぁ。そうですよね」
悪魔(来た…こいつ、王道…というより…こいつ…完全に男を狙ってる…?)
・・・昼休憩
天使「あの…お昼ごはんって…その…食堂ですか?」
男「あぁ、はい。弁当持参していない人間は食堂で食べてますよ?」
天使「私…その、人ごみ苦手なのです…あの…焼きそばパンかってこいや…(いっしょについてきてください)」
天使「あれ?」
男「!?」
悪魔「ニッシッシッシ」
男(なるほどね…)
天使「あの…男クン…食堂ついて来てもらっていいですか…?」
男「いいですよ」
悪魔「(ちっ、プロテクトをかけやがった…)」
天使「ありがとう…行きましょう」
悪魔「…(ちょっかいをかけると…全部あいつの餌になるから困る…どう出るか)」
天使「ありがとうございます…わざわざ注文までしてもらって」
男「大丈夫ですよ。これからは弁当買うか作るかで持参した方がいいかもね」
天使「はい…でも弁当って作ると…余ってしまうんですよね…」
男「そうなんですよね」
悪魔「買えばいいじゃない」
男(来たよ…悪魔…)
天使「でも毎日買うと…出費が…」
悪魔「冷凍保存すればいいのに…あなた、馬鹿なのかしら」
天使「ぇぇっ…!? な…馬鹿って…」
男(天使と悪魔の喧嘩って貴重かも)
天使「…胸小さいくせに」(ボソッ)
悪魔「…おいちょっと待て」
男「まぁまぁ…2人とも…」
天使「男クン…悪魔ちゃんが怖いの…」
悪魔「そうやって媚を売ればいいわ! この肉がっ」
天使「…ふぇぇ…」
男「あの…何方とも逆効果なんですが…」
男「とにかく…喧嘩しない…いいかい?」
悪魔「じゃあ戦争」
男「しそうだからダメ! ロシアとアメリカが戦争するレベル!」
天使「…男クンがしたいこと…願いがあったら…何でもするね…」
男「…いや特に」
天使「その…そういうこと興味あるのかな…?」
男「いぃ…ぇ(ぐあああああああああああ)」
悪魔(偉いぞ…必死に堪えてるぞ)
男「ふぅ…」
悪魔「随分長いトイレだったね」
男「……何も話すな。何も言うな」
悪魔「私は悪魔だ。するなと言われたらするのが世の常と思っている」
男「じゃあどうすれば何も言及しない?」
悪魔「永遠に語り尽くすまでな」
男「永遠なら語り尽くせないだろう」
悪魔「ククッ…貴様が敬語を止めないまでずっと言い続ける」
男「で、俺はこれからも天使にどう接していけばいいのだ?」
悪魔「そうだな…私には荒々しく接せてきてはいるが、他人には壁を作りすぎだ」
男「天使にも壁を無くせと?」
悪魔「いや、敢えて自分の限界とも思えるぐらい分厚い壁を作ってくれ」
男「本当に天使が嫌いなんだな」
悪魔「ああ。天使は大体の宗教で讃えられているからな」
男「まぁ俺から見たら同族嫌悪に見えるが」
悪魔「早速だ。壁をアピールしろ」
男「いや、壁ってのはアピールしないから意味があるだろ」
悪魔「そうなのか?」
男「そりゃそうだろう。人と接しませんと本人に言ったら、明らかに接したい気持ち全開じゃないか」
悪魔「なるほど…じゃあ…」
男「まぁ見とけって」
………
天使「あの…教科書…わすれ…」
男「あ…はい」
天使「?」
男「……」
悪魔(…さっきの優しい顔はどこ吹く風…教科書で2人はつながってると思いきや…)
天使「…」
男「…」
悪魔(すごく…男の存在感の無さと、教科書を見せている義務感、他人行儀な佇まい…)
天使(何…この子…凄く壁を感じる)
男「あ、ページ飛ばしていい?」
天使「あ…はい」
悪魔(全く話さないというわけではない点も素晴らしい…逆に終始無言だと気がある様に見えるからか)
天使(怒っている…訳では…ないのかな…? 興味がないだけ…?)
男(まぁこれがいつも通りの俺なんですけどね…)
天使「あの…」
男「…Zzz」
悪魔(寝始めた…いや、これは隙を見せるんじゃないのか?)
男「……」
天使(……)
悪魔(放置…完全に阻害しているのか…? 人間ごときが天使にこんな真似を出来るとは…)
天使「…あの…」
男「はっ…あ、はい」
天使「……避けています?」
男「いや…特に」
悪魔(天使も動き始めているな)
天使「…ちょっと怖い…」
男「あぁ、ごめん。なんつーか顔こんなんだしさ」
悪魔(…顔のせいにしたら…今までのがパーじゃないのか…?)
天使「よかった…嫌われているのかと思ったのです」
男(よし、ちょうどにチャイムだな…)
キーンコーンカーンコーン
悪魔(あ、教室からそそくさと出ていった…あいつの負けだな…)
………
男「ふぁ…大分壁は作れたよ」
悪魔「いや、全然出来てないじゃないか。良い所までは行ったが」
男「いや、壁は出来たよ。最後の受け答え、していないし」
悪魔「ん? それだけの理由でか?」
悪魔「最後の受け答えのタイミングでチャイムが鳴ったのは分かったが…」
男「うん。最後の受け答えで、いくらでも壁なんか取っ払えたんだよ。だけど答えなかったら。」
悪魔「あぁ、なるほど、これ以上にないくらい壁が生まれるということか。。。解りづらいわ!」
男「まぁ…これで天使は俺には接してこないよ」
悪魔「貴様も相当に悪魔だよ」
男「別に悪いことはしていないよ…」
悪魔「天使を嫌っている時点で悪魔だろう」
男「別に天使嫌っていないし、試しに壁を作ってみただけだよ?」
悪魔「そこまで理解できているなら、充分に友達なんて作れるんじゃないのか?」
男「壁を作るのは得意だけど、壁を取っ払うのは凄く苦手なんだよ」
悪魔「相手の気持に立って、その壁の構造を理解すればいいんじゃないのか?」
男「自分自身の壁の崩し方も分からない時点で…ね」
悪魔「でも、さっき壁が取っ払えたとか言ってたじゃなかったけ?」
男「うん…さすがにあれは俺でも分かるよ」
悪魔「人間というのは難しすぎる…」
男「人間関係が一番難しいと言った学者がいるぐらいだからね」
天使「…あの…男クン」
男「…?」
天使「さっき…答え聞いてなかった…」
男(そうきたか…)
悪魔「…もう堪能した」
男「あぁ、別に嫌ってないよ」
天使「よかったです…」
男「はは……」
………
天使「悪魔さん…男クンとは仲いいの?」
悪魔「なんだ? ガールズトークか? 興味ないぞ?」
天使「質問しているのです…いつも一緒にいるから」
悪魔「なんだ? 気でもあるのか?」
天使「ふふっ…とっても…」
悪魔「……男も可哀想に」
天使「あら? 悪魔に付きまとわれるよりかはとっても光栄かしら…」
悪魔「いつもお前は渡しの前に現れて面倒を起こすよな」
天使「何のことかしら…あなたの悪行で苦しんだ人を救っているだけじゃない」
悪魔「それはいつもの私だ。今回は救っている」
天使「本当に救いかしら? 苦しめているだけではないの?」
悪魔「さぁな。人の前ではぶりっ子決めている天使にだけは言われたくはない」
天使「私にはぶりっ子も決めれない疫病神に見えるのだけど? 日本宗教文化で例えると」
悪魔「ただ、今はお前は不要だ。あいつを救っている時点で天使はいらないんだよ」
悪魔「誰しもが救われる世界が理想郷なんだろ? 天使は」
天使「誰もが救われてたら、私たちは消えてしまうじゃない」
悪魔「天使なんだから、ほら、いいことじゃないか」
天使「余計なお世話よ…私は死にたくないの」
悪魔「だったら、さっさと他を当たれ。今でも死にそうな国や人々なんて大量だぞ?」
天使「私は、あなたを監視しているの。そうもできないのよ」
悪魔「どこの官僚だよ…悪魔1匹のために天使1匹…」
天使「だから、あなたにつきまとう男の子は私が幸せにしないといけないのよ? 分かる?」
男(何か…話しているな…適当に暇潰すか)
………
男「……そういえば…誰か存在していたはずだよな…何か忘れている気がする」
男「……寒い…教室に戻ろうかな」
……
悪魔「貴様か」
男「外は寒い…やはり教室のほうが落ち着く」
悪魔「お前は善か悪どちらが好みだ?」
男「可愛いほう」
悪魔「……」
男「難しい質問すぎるよ。でも、少なからず俺は悪魔は嫌いじゃない…」
悪魔「ほう…」
悪魔「じゃあ貧乳か巨乳どちらが好きだ?」
男「可愛いほう」
悪魔「殴るぞ?」
男「じゃあ綺麗なほう」
悪魔「……殴る」
男「ぎゃあああ! 痛い痛い」
天使「何しているんですか! 悪魔さん!」
悪魔「天使様には関係ない」
天使「大丈夫ですか…? 男クン」
男「あ…はい…大丈夫です」
天使「あなたは不幸を招きすぎです…」
悪魔「そいつはドMだ。それぐらいがむしろ飴なんだよ」
天使「……恵まれないとそういう考えになるのですね」
男「……」
天使「男クンは…やっぱり私がいないとダメですね」
男「…? おまえはなにをいっているんだ?」
天使「悪魔よ…すぐに男クンから離れなさい」
悪魔「はぁ? ただアマガミしただけじゃないか?」
天使「いいえ…あなたは…このままこの男クンを不幸にします」
男「不幸じゃないよ…えっと、その…」
天使「これ以上男クンに近づいたら…戦争します」
悪魔「おいおい…それはやりすぎだろう」
天使「元々、悪魔界は嫌われているし…いつ戦争が起きても可笑しくないぐらい…関係は悪いもの」
男「えっと…その…」
悪魔「…戦争は流石に…嫌だな」
天使「…男クン。大丈夫…不幸になんかしません」
男「ちょっと待って欲しい天使さん」
天使「…まさか悪魔に洗脳されたの?」
男「洗脳? バカ言え…」
天使「……まさか悪魔が好きなの?」
男「厨二病って感じだが、悪魔はちっとも嫌いじゃない」
天使「…その言葉だと…あなたは間違いなく身を滅ぼすわ」
男「身を滅ぼすから何なんだよ? 悪魔と出会う前から、既にボロボロだよ」
天使「いいえ…私が救います。だから悪魔から手を引きなさい」
男「こいつは悪魔だが、「悪魔」じゃない」
悪魔「もういいぞ、男…私は少なからずお前の不幸を食べていた」
男「そうかよ? じゃあ俺はお前を養っていただけじゃないか…」
天使「養うのと貪るのとは違うのよ?」
悪魔「……そういうことだ、天使と幸せに生きればいい」
男「嫌だね。せっかく手に持った大事なカードを切りたくないよ」
悪魔「ジョーカーじゃないか、それ」
天使「……」
男「俺はまだこのゲームは終わりたくないと思っている」
天使「……比喩していたって…何も解決にはならないわ」
男「比喩じゃねぇよ…悪魔は俺の…大事な存在だ」
悪魔「……ククッ」
男「あぁ…くっせぇわ…という訳でこんなクッサイ神を信じないクズ救ったて無駄ですよ」
天使「へぇ…」
悪魔「どうやら私といたいみたいだ。残念だな…嫌われ者の天使さん?」
天使「……酷い言われよう。久しぶりにマジであんたを消したいわ」
悪魔「意味もなしに悪魔を殺したら面倒だぞ? お前自身が殺される」
天使「…しったこっちゃないわァ…あなたが死ねば…男クン悲しむもの…それを救えば…いいのだわ」
悪魔「あープライドずたずたで吹っ切れているわ…男…逃げたほうがいいぞ」
天使「……逃げたほうがいいわぁ」
男「ちょっと待てよ…天使…悪魔に何する気だ?」
天使「……」
悪魔「ちょっと寝てろ…男…」
男「おいおい…ちょっと…」
男「…眠気が…」ドサッ
……
天使「悪魔が殺される理由なんてこの世にどれほどあると思う?」
悪魔「……そうだな」
天使「結局、悪魔を殺した所で関係は悪くなっても、私は罰せられないわ」
悪魔「…どうせ言うんだろ」
天使「ええ。『悪魔が不幸を食べようとしたので止めた』と」
悪魔「貴様の方がもっともっと…悪魔だよ」
天使「ふふっ……天使に逆らうからこうなるのよ…」
悪魔「…悪いな男よ…まだお前を好きになりきれていないのにな…」
天使「じゃあね…」
悪魔「………『幸せ』にな」
………
……
…
女「おはようなのです。男クン」
男「あぁ…おはよう…今日も寒いな…」
女「はい…あったかいお茶あるよ?」
男「あぁ…ありがとう…」
女「ふふっ…今日も寒いけどがんばろうね」
男「がんばれねぇよ……寒すぎて…」
男「……たった数日だったかな…急に何か心の苦しさが抜けた気がするよ」
女「突然何? 昨日そういうアニメでも見たの?」
男「いや…こういう言葉を並べたいというのもあるけど…今は苦しくないんだよ」
女「それはきっと私がいるからなのです。えっへん」
男「図に乗るな…まぁ…そうかもしれないが…」
女「どうしたの?」
男「いや。別に…」
苦しさが無くてなにか寂しい……
先生「この時代背景には大きくキリストが絡んであり…」
………
男(女とは昔からずっと育ってきたはず。で、仲もいい…)
男(でも……ずっとのはずなのに…おとといまではこんなんではなかった…)
男(記憶なら…たくさん残っている…買い物に行ったり、遊園地に連れ回されたり…いろいろと)
男(どうしてか…昨日…一昨日の…記憶が…凄く濁っている)
男(何か…あったのか? いや…そんなはずはないんだ…)
男(……何を考えているんだ俺は…あほらしいわ)
男(はぁ…こんなことを考えてるってことはよっぽど変な映画を見たか…)
男(まぁいいや…授業に専念だな……)
男「…うーん」
女「どうしたの?」
男「今トランプしてるじゃん」
女「そうだね」
友人A「何を当たり前なことをw」
男「俺は今ジョーカーを持っている」
友人A「なぜ宣言するのだいwww」
男「右端にある」
友人A「なるほど…駆け引きだな…なら…右端は危険だな」
友人A「ほいさっ」
友人A「あっがりー♪」
女「…わざと負けてどうするの…男クン」
男「うーん…ジョーカーは置いておきたいな…」
女「なんでよ…」
男「分からないや、なんでかな」
友人A「ジョーカー好むおれカッコイイ(笑)」
男「……うーん」
女「……なんか元気無いね?」
男「なんかあると思うんだけどね…このカード見てると」
女「ただのトランプじゃない」
男「……うん」
女「それ貰っていい?」
男「えっ、何で?」
女「何か嫉妬するのです。さぁ」
夜………
男「そういえば…何かで、持っているものを枕において寝れば夢に出るって聞いたな」
男「…枕に入れてみるかな…」
男「俺がジョーカーに惹かれる理由が…わかるかもしれない」
………
……
…
?「…」
男「……あれ…この感覚はどこか…懐かしい」
男「冷たくて…なんつーか…寂しい」
男「全然満たされないし…削られてばかりあるのに…心地いい」
?「貴様は本当に…迷惑だよ」
男「? 誰だ…お前」
?「貴様のせいで……色々失ってだな…このカードの中に逃げるのに精一杯だったんだ」
男「カードに逃げる? カードってこのトランプ?」
?「正解。と、記憶の断片すら残してくれていないな……さすがあいつだ仕事に抜かりがない」
男「…俺、また変な映画でも見てしまったのか」
?「映画にしては長すぎる。ドラマにしては短すぎたな…」
男「それにしても…寒いな…ここ」
?「そうだろうな。居心地悪いか?」
男「嫌いじゃない」
?「そうか」
?「聞きたいことがあってだな…お前は幸せか?」
男「…世間帯から見れば…不幸じゃないと…思う」
?「お前自身はどうなんだ」
男「幸せなんじゃないかな」
?「それでいいと思っているのか?」
男「それでいい筈だよ。人間ならね」
?「そうか……だが、どこか客観的に物を見ているな…壁を感じるぞ」
男「壁?」
?「ああ。自分自身に壁を作っている…」
男「あるかもね。正直になりたいものだ」
?「安心しろ。ここでならそんなもの取っ払っちまえ」
男「…誰か聞いてたら嫌だよ」
?「悪魔が聞いてやる安心しろ」
男「余計不安じゃないか。弱みを見せるってことはそこに付け入られる」
?「弱さを魅せつける奴は強いんだよ。弱さを隠す奴ほど、弱いんだよ」
男「なるほどね…」
?「懺悔しろ…とは言わない。私は聖職者じゃないからな」
男「……幸せだが…楽しくない……」
?「その調子だ」
男「つまんねぇ!!! なんか、もっと孤独でも…楽しくありたい!!」
?「それがお前の願いか?」
男「願い…?願いではないな……というより…お前は誰だ…ずっと触れていなかったけど」
悪魔「私は、悪魔だよ」
男「悪魔…へぇ…よく出来た夢だ」
悪魔「そう思ってもらって結構だ。実際これは夢だからな」
男「昨日一昨日の感覚に似ている。お前といると」
悪魔「だろうな。私はお前と過ごしていたからな」
男「そうか。非現実すぎるとはいえ、妙に納得してしまった」
悪魔「どうする? お前は私が好きか?」
男「いきなりだね…凄い馬鹿らしい質問だよ」
悪魔「今はカードにとどまるのが限界でさ…立場上天使に殺されたことになっているんだ」
男「じゃあもう悪魔じゃないの?」
悪魔「悪魔さ。ただ…もう力が無い。だからさ…」
男「何よ?」
悪魔「お前の不幸を…捧げてくれ」
男「不幸が欲しいのか?」
悪魔「ああ。私が息を吹き返すには…不幸が…必要」
男「なるほどね。どれぐらいの不幸が必要?」
悪魔「そうだな…悪魔の不幸は個人レベルで見積もったとして…世間帯から見た上での不幸度合いは」
男「うん?」
悪魔「友人・恋人・家族・名声・金…全てを失うレベルだな…」
男「そりゃまた凄いな……」
悪魔「あぁ。そのレベルまで削られたんだ…天使にな」
男「…で、それで助かる保証はあるの?」
悪魔「そうだな。なんとか…助かるかもしれない」
男「そうだな…でもこれは夢だ」
悪魔「ああ。夢だ。夢を信用した所で何も幸せにはなれない」
男「ふふっ……」
悪魔「……好きにすればいい。現世で好きに生きればいいんだ。生憎お前は天使に微笑まれた人間」
男「天使ね…だから俺は幸せだったのか」
悪魔「死ぬまでお前の幸せは保証されるはずだ。どこかで道を自分から踏み外さない限り」
男「……」
…………翌日
男「……カード…ある」
男「…よし」
………学校
男「…」
女「おはようなのです。今日も寒いね」
男「……」
男「わりぃな…女」
女「なに…? え…それ…」
男「そう、これで…ちょっと痛い目に…うん」
女「え…やめて・・・だ…誰か…いやぁぁ」
………響くサイレンの音
……
…
数年後………
所長「これからは社会に出たら、真面目に生きなさい」
男「はい…すみませんでした」
男(金も、家族も、友人も、恋人も…全て失った…)
男(残ったものといえば、生ぐらいか…成人式にも出てないしな…まぁ出れないがな)
?「おい、そこの人間」
男「はい、あなたも人間でしょう」
?「貴様は喋るガーゴイル像を見たことはあるのか?」
男「ありゃ、人間の姿にはなれなかったのね」
?「お前は元々、家族がいなかっただろう…おかげでこのザマだ」
男「あぁ…家族ね。だから足りなかったのか」
?「どうだ? 社会復帰はできそうか?」
男「そうだな……とりあえず結婚はしようと思う」
?「そりゃまた突然結婚か…なぜだ?」
男「決まっているだろ、『家族を失わないといけない』からな」
?「お前も立派な悪魔になれそうだな…」
男「あんた程立派な悪魔もみたことが無いけどな」
?「じゃあ、早く、立派な結婚相手を探してこい」
男「ああ。少年院歴持ちだがいくらでも方法なんてあるさ」
?「待っているぞ、私が人間の姿になった時…お前にもう一度願いを聞いてやる」
男「ああ。それまで、待っていてくれ。その時ははっきりと伝えてやる」
男(俺は悪魔を好きだということを)
END
ありがとうございました。数年ぶりのSSでした。
携帯に何故か残っていたSSの書きかけを完結させました。
また機会があれば書きたいと思います。見ていただいた方どうもすみませんでした~w
お疲れ様
保守した甲斐があった!
大層乙であった
これ男自身は全然不幸じゃないから何を失おうが駄目なんじゃないの
>>234
男自身の不幸でもいいんだが、男に関わることで他の人々に不幸が降り注ぐ
そういった客観的不幸が必要ってことで解釈してくれ。
これ書き終えたら>>1は悶絶するって書こうと思ったら終わってた乙
>>237
すまないな何を悶絶するかは分からんがなw
天使は人間でも殺せるのね
>>238
あれは天使じゃない。
天使が用意したただの人間
なんやて